チューリッヒの公理~損切りの重要性~
「マネーの公理」という書籍をご存知でしょうか?
原題は、「チューリッヒの公理」で、初版は1985年にアメリカで出版されました。
「チューリッヒの公理」とは、第二次世界大戦後にウォール街に集結し、株式市場や商品取引に参加したスイス人投機家たちによって生み出された、12の公理と16の副公理から成る投機のルールです。
金融業界では非常に有名な本で、投資の世界に身を置いている方ならご存知の方も多いでしょう。
私も1年に1度は読み返しています。
本書はイントロダクションから読者を引き付けます。
「慎重に言葉を選ぶのはやめよう。公理があなたを金持ちにする。」
そんな自信満々の本書、私の投資キャリアと照らし合わせながら読み返すたびに、そこに書かれている公理は、真実だと実感しています。
それでは、少しだけご紹介しましょう。
副公理2 分散投資の誘惑に負けないこと。
一般的な投資のセオリーでは、分散投資をしてリスクを減らしましょう。と言われると思いますが、公理は過度の分散投資を否定しています。分散するにしてもせいぜい3つか4つで十分と言っています。理由は、多くの銘柄に投資するには、より多くの時間と勉強が必要になること、銘柄数が多いと、窮地に陥った時に、迅速な対応が取れなくなってしまうことなどが挙げられています。
バフェットも過度な分散投資を否定しています。
「リスクとは、自分が何をやっているか、よくわからないときに起こるものです。」
「投資対象の企業を熟知する人が標準的な資金で運用するのは6銘柄で十分ですし、私ならおそらく資金の半分を一番気に入った銘柄につぎこむでしょう。」
経済学者というだけでなく素晴らしい投資家でもあったケインズも次のように述べています。
「投資家は自分がそれについてよく知っており、信頼のおける経営陣がいる2~3の企業に投資資金を集中すべきである。」
自分が十分に理解でき、信頼できる経営陣のいる企業に集中投資をし、その後も注意深く見守ることが、個別株投資において投資家の取るべき姿勢といえそうです。
公理3 船が沈み始めたら祈るな。飛び込め。
副公理4 小さな損失は人生の現実として甘んじて受けよ。大きな利益を待つ間には、何度かそういう経験をすると考えろ。
これは、「損切り」ついてのルールです。個別株投資をやる投資家にとって、最も重要な行為で、投資で成功するには絶対に身につけなければならない技術であると感じています。
多くの書籍や力のある投資家が言及しているところですが、個別株投資で絶対に避けなければならないのは、「大損」することです。大損すると、投資に対する意欲や希望がなくなり、マーケットから退場することになります。株式投資で失敗した方の多くは、初期の段階でこの損切りが出来ずに大損してしまった方だと思います。
公理は、「沈み始めたら」と言っています。つまり株価が下がり始めた初期の段階で、状況が改善しつつあることを示す信頼できる証拠がないかぎり、スパッと損切りするように言っています。船が半分沈んでからでは遅いのです。
例えば、私は、買値から10%下落したら、強制的に損切りするようにしています。唯一保有し続けるのは、心底その企業のビジネスが気に入っていて、将来性があり、経営陣が信頼でき、その株価の下落が短期的なものであると確信できるときだけです。
株価が下落し始めたら、
株価が上昇に転じるのを祈ってはいけません。
その企業のいいニュースを探してはいけません。
株は長期投資だと開き直ってはいけません。
ナンピン買いで正当化してはいけません。
断固として損切りするのです。
確かに損切りは、失敗を認めることですから、最初の方は苦痛を伴います。
しかし、慣れればこの苦痛は緩和されます。
もう一度言います。
個別株投資で、絶対に避けなければならないのは、「大損」です。
「損切り」できない投資家は、生き残れません。
小さな損失は人生の現実として甘んじて受けよ。大きな利益を待つ間には、何度かそういう経験をすると考えろ。
船が沈み始めたら祈るな。飛び込め。